Therapist-Works

現役心理士がお伝えする心の健康に関する情報発信ブログです!

適応・不適応 -人はなぜ不適応を起こすのか?-

いよいよ本日から新年度に入ります。

新年号も決まりますね。

新たな環境へ挑戦していく方は多くいらっしゃると思います。今回は、そのような方の最初のステップとして立ちはだかる「環境への適応」についてまとめていきたいと思います。

 

 もくじ

  

 

f:id:therapist-works:20190227005403j:plain

 

 

 

適応とは?

「環境への適応」とはどういうことを言うのでしょうか。

 

そもそも適応とは…

生き物が環境に合うように自分の身体や行動を変容させること、またはその状態をさします。

個体発生的な適応の定義としては、個体が成長発達していくなかで遺伝情報と経験をもとに、物理・社会的環境との間において、欲求が満足され、様々な心身的機能が円滑になされる関係を築いていく過程もしくはその状態をいいます。

 

定義的には少々難しい表現となっていますが、要するに、ある環境において心と体がともに健康に過ごそうとする過程やその状態と考えても良いと思われます。

 

例えば、海外で生活するために英語を習得して活用していく過程もしくはその状態が挙げられます。

 

 

 

不適応とは?

適応とは対義的な表現には「不適応」という言葉があります。

 

不適応とは…

生態が自然的環境、社会的環境、あるいは自分自身の精神内界に対して、適合する行動を十分にとれず、本人または社会にとって何らかの不利益を招いている状態を指します。

また一般に、人が社会的な環境に対して適切な行動がとれずに、心理的に不安定な状態を示す諸症状が現れている場合をさします。

例えば、緊張状態、不満感、挫折感、有効性や反復性のなさ、防衛的な反応(防衛機制)などが挙げられます。

 

f:id:therapist-works:20190331234517j:plain

 

 

 

不適応行動とは?

環境あるいはその個人の精神内界に対して、適さない行動や反応を示すことを「不適応行動」といいます。 

不適応行動の要因については以下のように理解されています。

  • 脳に何らかの障害が生じている器質性精神病による場合(例えば記憶機能をつかさどる部位の損傷による記憶障害など)、
  • 統合失調症双極性障害などの精神疾患による場合。
  • 環境との相互作用による心因性による場合。

そして心因性の場合には、神経症状、心身症状、非社会的行動、対人関係障害、反社会的行動、習癖、知的問題、逃避、ストレス反応などさまざまな状態を指します。

 

不適応と不適応行動で少し混乱しやすいかもしれませんが、

不適応は環境に適応できていない状態から生じる心理的な反応、

不適応行動は自分や周囲の人・環境に対して適さない行動と分けて捉えると良いと思われます。

 

 

 

不適応な状態・行動をどう見るか

さて、適応について定義的な外観をしましたが、なぜ環境に対して適切な行動がとれないと、心理的に不安定な状態になったり、個人および社会環境にとって適さない行動をとるようになるのでしょうか。

簡単な例として、学生から社会人へと生活スタイルや環境が大きく変化する状況を見てみましょう。 

 

学生生活では自分が好きなタイミングで履修した授業に参加し自分の都合で授業を欠席しても何も問題はありませんでした(単位上は問題になるかもしれませんが)。

しかし就職すると多くの場合は会社によって定められた勤務時間に合わせて通勤しなければならないですし、個人のちょっとした都合で休むわけにもいかなくなってしまいます。

他にも就労規定、仕事上のマナー、上下関係などこれまでの生活とは質的に全く異なる環境に身を投じなければなりません。

 

このようなに環境が変化すると「自分はやっていけるのか?」といった不安や緊張を感じるだろうし、慣れない生活環境によって体調を崩しやすくなる考えられます。

このような状態は一般的に見られるものだと思いますが、細かく見ていくと以下のようなプロセスを辿っていると考えられます。

 

  1. 学生生活という環境に適応していた(適応的なスタイルを確立していた)。
  2. 新しい環境に対して学生生活で持ち得ていた適応的なスタイルが通用しなくなった。
  3. 新しい環境に対する適応スタイルが確立されていないため生体が反応した(不安・緊張など)。

 

このように見ると、は全く同じ方法で様々な環境に適応しているのではなく、各環境に適した生活の仕方を習得していることがわかります。

 

その新たな生活の仕方(適応的なスタイル)が確立されるまでの間に生じるのが不適応な状態・行動だと考えることができます。

 

 

 

適応に至るまで

様々な要因によって生じる不適応反応は如何にして適応状態へと移行していくのでしょうか。

環境への適応にはいくつかの能力が求められてきます。

次回はそれらの能力をまとめていきたいと思います。

 

 

 

まとめ

  • 生物が環境に合うように行動を変容させ、心身共に健康に過ごそうとする過程やその状態を「適応」という。
  • 本人または社会にとって何らかの不利益を招いている状態を「不適応」という。
  • 環境あるいはその個人に対して、適さない行動や反応を示すことを「不適応行動」という。
  • 人は全く同じ方法で様々な環境に適応しているのではなく、各環境に適した生活の仕方を習得している。
  • 新たな生活の仕方(適応的なスタイル)が確立されるまでの間に不適応や不適応行動が生じる。

 

 

 引用参考文献 「有斐閣 心理学辞典」

 

Twitter

ひろくん@心理士(神経心理学)/@kuroro0829