知能検査-IQが高いと得をする?損をする?
前回はIQの種類とその位置づけについてお伝えし、IQが高い人は幸せなのかという問題を提起しました。
「幸せ」の定義はさまざまで価値観は人それぞれですので答えを出すのは難しいですが、社会生活においての適応度という側面ではそれなりに答えが出ると思います。
今回は知能の高低と社会適応についてお伝えしていきます。
もくじ
人の適応は「知的機能」×「環境」で変わってくる。
さて、突然ですが、皆さんは天才になりたいですか?
この答えは人それぞれだと思います。
ある分野において突出した才能を開花させたいと思う人がいれば能力を欲するかもしれません。しかし、逆に「今のままでもいい」と思う人もいれば、はたまた「むしろこんなにできなければよかったのに。」と思う人もいるかもしれません。
なぜ人によって答えが変わってくるのでしょうか。この違いは何だと思いますか?
私は この答えのひとつに「環境への適応状態」が大きく関係していると考えています。
適応とは…?
環境への適応状態、そもそも適応とはどういうことかと申しますと、
「適応」とは精神医学用語のひとつで、環境や特定の状況に対して心身共に負荷なく健康に生活することができている状態を指します。(参考:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
元来、人間は様々な環境に適応し生活する力が備わっております。しかし、環境から求められる能力と自身が備えている能力に大きな差があると、次第に適応は難しくなり健康状態が悪くなっていくことがあります。
つまり環境への適応には「知的機能」がひとつの要因として大きく関わってくると考えることができます。
なぜ知能が関係しているのか?
環境への適応と知能の関係はどこにあるのでしょうか。
例を挙げてみましょう。
①苦手さがあり上手く適応できない
例えば、皆さんがよく耳にする「ワーキングメモリー」この能力は見聞きした情報を一時的に記憶に留めておきながら、あれこれと処理する力と言われていますが(詳細は後日お伝えします。)、このワーキングメモリーを苦手としている場合はどうなるでしょうか。
学校や職場の朝会で「今日はAとBとCをやります。まずBをやって、次にAをやって、いったん休憩(D)してからCをやります。よろしくお願いします。」と口頭で言われたとします。
おそらく、ワーキングメモリーを苦手としている人は「え?なんて?」と思うだろうし、作業をしてるなかで「次なんだったっけ?」とわからなくなると考えられます。
「口頭で指示が出される(環境)」ことに対して「記憶し処理/整理する(知的機能)」ことを苦手としている人は、その環境において指示の実行が難しくなると考えられます。そしてその状態が続けばストレスがたまり次第に不調を来していくこともありえます。
苦手なことをひたすらやらされたら誰でもストレスになりますよね。
このように環境が求める能力と自身が備えている能力に大きな差があると適応していくことが難しくなってきます。
②苦手さがなく上手く適応できている
その反対にワーキングメモリーを得意(もしくは平均的)としている場合はどうなるのでしょうか。
与えられた指示を整理し正しく記憶することができることから、スムーズに作業に取り掛かることができると思います。つまり、こと能力という側面においては、困難さはなく環境に適応できていると考えることができます。(今回の場合はワーキングメモリーに限定して話しています。本来は様々な能力が複合的に関係しています。)
この場合「今のままでもよい。特に困っていない。」と感じると思います。
そして、このように困り感のない状態が「適応している状態」と言えます。
③苦手さはないが上手く適応できない
基本的には上記のような例が多いと思います。ですが、なかには以下のように困っている人もいると考えられます。
それは「自分だけ特定の能力が突出している場合」です。
これは集団のなかで自分だけ能力に差がある点においては、①番と状況は同じと考えられます。
作業する速度を例に見るとわかりやすいかもしれません。
大多数が2時間かけて終わらせる作業を自分だけが30分で終わらせた場合はどうなるでしょうか。個人作業であればどんどん次の作業に取り掛かれますが、チームで作業を進めなければならない場合、次の作業に進めず悶々と待ち続けなければならない時があると思います。頭の中では流れの工程がはっきりとしている場合はなおさらストレスになるかもしれません。
良くも悪くも集団のペースに合わせなければならない環境であればこのような人には負荷がかかり適応が難しくなることが考えられます。
環境に適応するには
日用生活のなかでは様々な経験や環境の変化が起こっておりその都度適応が余儀なくされます。では環境に適応していくにはどのような方法があるのでしょうか。
この方法は3つの視点から考えることができます。
その3つとは「個人の能力の向上」「個人の工夫」「環境の工夫」です。
この視点は障害に対する認識や受容について大きなヒントを与えてくれるものになり大変重要なテーマにもなりますので後日お伝えしていこうと思います。
次回予告
今回は知能と社会との関係について簡単にお伝えしました。
次回は知能にはどのようものがあるのかお伝えしていきたいと思います。
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