Therapist-Works

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トラブル対応が上手い人②

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前回の記事では対人トラブルにおける問題解決を上手く行うための態度や思考方法について2点取り上げ、自分の考えや感情の捉われに気づくこと、自分と他者の違いに気づくことについて説明しました。

 

今回はそれに引き続き、さらに2つのポイントを紹介していきたいと思います。

 

プロセスを分析

今回ご紹介するひとつ目のポイントはプロセスを分析することです。

 

これは、発生したトラブルのいきさつを客観的に整理し、その流れを的確に把握する力とも言えます。

 

原則として対人トラブルというのはきっかけがなければ生じることはありません

 

その点を踏まえたうえでまずはそのサイクルを見ていきます。

 

人は環境(自分以外の人、集団、出来事など)から入ってくる何らかの刺激に対して何らかの反応を示します。

 

そしてその人の反応は環境に向けた刺激として発信され、受け取った環境はその刺激に対して反応を示し、その反応は個人に向けて新たな刺激として発信されます。

 

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自分と自分以外の対象との間を刺激が行き交うことで、そこにひとつの関係が出来上がり、その関係性の中でトラブルや問題というのは生じてきます

 

この前提を考慮したうえで、トラブルを解決するのが上手い人というのはその流れ(プロセス)を的確に把握し整理することができます。

 

これは、以前にも紹介したことのある、刺激-反応-結果に置き換えて考えるとさらに整理しやすくなります。

 

ABC分析という手法ですがこちらは先ほど説明した自分と環境の相互の関係性を直線状に置き換えたものとして理解することができます。

 

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目の前で生じたトラブルというのはこの工程を何度も繰り返し行われたうえでの最終的な結果の部分となります。

 

例えば、日常の会話場面で同僚と言い争いになった場面を切り取ってみてみると

 

刺激:同僚が自分の意見を否定した

反応:自分は感情的になり言い返した

結果:同僚も感情的になり言い争いになった

 

と整理することができます。

 

ですが何か特別な事情がない限りはそのような一場面だけですぐに感情的に怒り出す人は少ないと思います。

 

人は不快な気持ちが蓄積されることで、最終的に感情が爆発し怒りとして表に出てくることが多いです。

 

つまりこの例の場合、その日に意見を否定される以前から同僚に対してネガティブな気持ちが蓄積されており、最終的な結果として怒りが爆発してしまったと考えることができます。もしかしたら同僚の言い方がきつかったのかもしれません。

 

刺激(言い方きつい)→反応(ちょっとイライラ)→刺激(言い方きつい)→反応(さらにイライラ)……結果(怒り爆発)といった関わりが長く続いていたなど。

 

そのように考えると、例題におけるトラブルに至った原因というのは何回も刺激と反応を繰り返した先にあったと理解することができます

 

また、逆にその同僚の言い方がきつかった理由として、同僚もその人の普段の言動から仕事へのやる気を感じなかったなど、ネガティブな感情を抱き続け我慢していたのかもしれません。

 

このように見ていくとトラブルに発展する場面というのはお互いに感情的になる背景があることがわかります。

 

つまりは問題のプロセスを整理するためには目の前の出来事だけに目を向けずに、両者がそのように感じるに至った背景を整理する必要があるということになります。

 

問題を上手く解決することができる人は、そのようなトラブルに至る経緯を表面的な出来事だけで理解しようとせず、問題の背景にも目を向けてそのプロセスを整理(関係性の理解)したうえで、問題点の把握や改善点を検討していきます。

 

これは前回の記事で紹介した、自分と相手の考えや感じていることは違うといった自他の区別を意識することでより適切に判断することができると思います。

 

対人関係に困った時にはお互いの背景を意識したうえでそのプロセスを整理してみてはいかがでしょうか。

 

 

本質を見抜く

ふたつ目のポイントは本質を見抜くことです。

これは先ほど紹介した背景を探り問題を整理する方法とは逆の方向性の考え方になります。

 

ここでいう本質というのは本来の目的を指します。

 

「何に向かってそれをやっていたのか」

「何のためにこれをやることにしたのか」

「達成しようと思っていたことはなんだったか」

 

といった集団で活動するうえで求めらる共通の見解となります。

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何か意見が衝突するときというのは、考えや感じ方は違っていても、目指す方向性は一致しているということが多いです。

 

例えば、営業の成績を上げるための会議をしていた時に意見が衝突した場合、考え方や感じ方は違っていたとしても「営業の成績を上げる」という目的は一致しています。

 

トラブルが生じさらに関係が悪化してしまう時というのは、この目的が一致していることを忘れてしまい、自分(存在)を否定されたと感じた時に発展しがちです。

 

もちろん単純に存在を否定する言動は差別的行為に値しますのでその場合は相手にする必要はありません。

 

そのような例外を除けば対人トラブルというのは意見の相違であることが多く、本来の目的を再確認することで選択するべき方法を改めて冷静に検討する状態が整っていきます。

 

また、お互いの良い点を掛け合わせ弱点を補い合う形でより良い方法を検討することも可能となります。

 

一方で、目的を再確認してもどうしても合意がなされないときがあります。

 

それは目的が価値観を体現しようとしたときによく起こります。音楽性の相違などがこれに当てはまります。

 

具体的な作業や明確な目標がある場合はあまり起こりませんが、そのような抽象的な概念を目的としたときは、実はお互いに目指すべき方向性・目的が違っていたということが起こりやすくなります

 

それに気づかずに時間が経過していたという場合は、いま一度自分が目指そうとしていたものは何かを見直すことが大切です。

 

相手との本質的な違いを見いだせたのであれば、お互いの考えを尊重し合う形で、各々が目指していきたい方向性を歩んでいけばよいと思われます。

 

お互いに独立した活動が難しい場合は、責任を取る立場にある人の意見を優先しましょう。会社でいえば社長の方針がそれにあたります。

 

疑問を感じ方向性を主張することも重要ですが、その際自分の置かれている立場や役割を再確認することも大切になります。

 

 

とはいえ生き方は人それぞれ

さて、対人トラブルにおける問題解決を上手く行うための態度や思考方法について前回に引き続き紹介をさせていただきました。

 

これは一つの考え方となりますので必ずしも正解ではありません。

 

どうしてもその人とうまくいかない、折り合いをつけることが難しいという場面もあると思います。

 

その場合は無理して関係を回復させる必要はないのかなというのも一つの考えです。

 

そんなときはお互いに傷つけ合わないような距離感を大切にすることを意識してみましょう。

 

100人中100人と良好な関係を築き維持することは現実的ではありません。

 

自分が有意義な生活を送るうえで重要な人物となるのは数人であるとも言われていますので、適度な関係性・距離感というのも考えてみる価値があるかもしれませんね。

 

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