基礎心理学ー学習についてー
「学習」と聞いて、みなさんは何をイメージしますか?
一般的には「学校での勉強」のイメージが強いと思います。しかし、人を含めた生物全般は生涯を通して学習を続けていきます。
「学習」とはいったいどのような仕組みでなされているのでしょうか?
条件づけ
学習の基本的なプロセスは「条件づけ」という概念で説明されることが多いです。
条件づけとはある特定の刺激に対して特定の反応をするといった一連の学習プロセスを指します。
条件づけは2つに大別されており
- レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)
- オペラント条件づけ(道具的条件づけ)
があります。
今回はそのひとつであるレスポンデント条件づけについてまとめたいと思います。
レスポンデント条件付づけ
この条件づけは生理学者パブロフの犬の条件反射の実験が有名です。
犬が餌を見る・食べる(無条件刺激)ときに唾液が出るといった反応(無条件反応)を利用し、無条件刺激と同時にメトロノームの音(条件刺激)を対に呈示する事で、次第にメトロノームの音を聞くだけで唾液が分泌される(条件反応)ようになります。
パブロフはこのときのメトロノームの音(条件刺激)と唾液の分泌(条件反応)の間に新たな連合が条件づけられたことを発見しました。
といった変化が見られました。
人間にも同様に見られる
古典的条件づけは人間にも同様に見られます。
例えば、梅干しやレモンを口にするときに唾液が多く出てきますが、その映像や話をするだけでも唾液が出るといった経験があると思います。
この例は古典的条件づけがなされたからだと考えることができます。
不適切な古典的条件づけ
梅干しやレモンのような反応は特に生活に支障をきたすわけではありませんが、なかには不適切な古典的条件づけにより生活に支障をきたすことがあります。
例えば、親が虫嫌いだとします。
ある日、A君(虫は大丈夫)の前で親が虫を見て驚愕し、A君は大きな声を出し驚愕した家族の様子を見て恐怖するという体験をしました。すると、その日以降、A君は虫を見るだけで恐怖するようになりました。
この例の場合、
- 虫を見る(条件刺激)→特に反応なし
- 親の驚愕(無条件刺激)→恐怖する(無条件反応)
- 虫を見る(条件刺激)→恐怖する(条件反応)
といった条件づけが成立したと考えることができます。
この学習プロセスは不安症や恐怖症との関連も強いとされています。
実際には無害な刺激に対して一度経験した不安や恐怖といった感情が優先されるようになることで不適切な反応が継続することになります。
この反応の特徴は自分でも不合理だとわかっているにも関わらず不安や恐怖といった感情がコントロールできない点にあります。
これらの反応に対して不適切な条件づけが解消(消去)されれば症状も治ると仮定し考案されたのが行動療法とされています。
子育てや職場において
さて、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)についてまとめてみましたが、ここでひとつ問題を提起したいと思います。
みんなが普通に食べたり使ったりすることができるなか、B君はそれを食べるのを極端に嫌い、Cちゃんは極端に避けようとしています。
こんなときあなたはその様子を見てどのように接しますか?
それに対して抵抗する理由や原因、プロセスは様々ですが、そのひとつを理解するのに今回のレスポンデント条件づけが応用できるときがあります。
第一に大切にしなければならないことは、
「この子にとって特別なわけがあるのかもしれない。」
という視点を持つことだと私は考えます。
この考えは大人の場合でも同様です。「もしかしたらこの人は…」といった具合に視野を広げて考える習慣を持つことが大切です。
人にはひとりひとり経験してきた人生があります。「一般的に考えたら普通はこうだから!」と一蹴してはその人の個性や可能性を潰してしまう恐れがあります。
常に柔軟な思考を持ってものごとに当たりたいですね。
まとめ
- 学習の基本的なプロセスに条件づけというものがある。
- 条件づけはレスポンデント条件づけとオペラント条件づけの2つに大別されている。
- 学習により不安症や恐怖症が形成されることがりその治療法として行動療法が考案された。
- 共通の物事に対してひとりひとり異なった経験をしていることから、特徴的な反応は一般的な理解に拠らないこともある。
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